俺の名は李絳攸。

紅孤児院の委員長であられる黎深様に拾われ、

今年の春に中学を卒業した。

初めは高校なんぞに行かず就職し、孤児院の役に立てればと思っていたのだが

邵可様や玖琅様の強い勧めにより高校へ行くことになった。

”そのまま孤児院居ろ”と皆さんが仰ってくださったのだが

やはりそう甘えてばかりいられないと、孤児院を出て行くことに決めた。

それから有難いことに、住み込みで働けるバイト先まで見付けて頂いた。

本当にお世話になってばかりだ。

いつか恩を返せたら、と思う。

しかし、問題は住み込みのバイト先だ。

黎深様と玖琅様はひどく反対されていたようなのだが

邵可様は良い人達ばかりだと仰る。

なんだか不安になってきた…。










車の窓から覗く景色は

桜の木はもう沢山の緑が茂っている。その中に淡い桃色がちらちらと覗く。

残り少ない淡い桃色の花弁が舞い落ちてくる様をぼうっと眺めていた。


もう何時間も見ているのは屋敷の塀なのだろうか。

いつまでたっても途切れなぬ塀のような物に苛立ちさえ覚えはじめる。

やっと門らしい物が見えはじめると、瞼を閉じて手を強く握る。

緊張のためか少し鼓動が早くなる。


車が門を通ると目の前には巨大な屋敷が映る。

幾つか他にも屋敷があるようだ。

全くもって無駄だ。

家なんぞ人が住めれば充分だろうが。

しかし車が進む先は目の前の一番巨大な屋敷。

ここで多分働く事になるのだろう。

車が扉の前で止まり、運転手がドアを開けてくれる。

絳攸は気合を入れると、此処まで連れてきてくれた運転手に礼を述べると

屋敷の扉を開けた。



















絳攸メイドさんです。♂です。
頑張って更新しまーす!!