パンパンパン
扉を開けた先に待っていたのは
火薬の弾けた音と、飛んできた長い紙のようなモノ。
リボンのように長い紙が髪や肩に絡まり地面に落ちずに絳攸のもとに留まる。
それを目の前の人が髪や肩から落とすと、にこりと人の良さそうな顔で笑う。
隣の2人はパチパチと拍手をしているようだ。
呆気にとられていた絳攸ははっと意識を戻し、パンッという音はクラッカーが鳴らされたのだと気付き
目の前に立つ三人を改めて見直した。
「お、同じ顔ぉお!?」









あの藍家当主と名乗った三つ子に年代が同じだからと”藍楸瑛”の世話を任され一週間。
当の”藍楸瑛”の姿を見かける事もなく。
ただ部屋の主である本人が帰ってきもせず、また汚れるわけもない部屋を掃除するのも一週間経った。
三つ子は「学校が始るまで後、三週間。その間に逢えるといいね。」何て、
暢気な事を言っていた。
しかし、汚れない部屋も、世話する相手である藍楸瑛とやらに会えない事などどうでもいい。
藍龍蓮!!
何故相手にするべきではない相手にこうも毎日付き纏われなければならないのか!!
「絳攸」
名を呼ばれぐぎぎぎぎと錆びれたドアが開くような音と共に少しずつ振り返れば、案の定。
藍龍蓮は頭に一杯の桜の枝を付けひらひらと花弁を舞わせながらこちらへ向かって走ってくる。
そこ、さっき掃除したばっかりなんだが…。
ピクリとこめかみに青筋を浮かせ引きつった笑顔を作ってみせる。
が、あえなく失敗に終わった。
「りゅ…龍蓮様…?」
折角掃除したばかりのカーペットには泥の靴跡。
しかもご丁寧にカーペットに、泥をこすり付けたのではないかと言う程にくっきりと残っている。
「なんだ絳攸、私と2人のときは呼び捨てで良いと言ったはずだが?」
「では、遠慮なく…」
絳攸はにこっと笑ってみせると、俯きキッと睨む。
「お前!掃除した所を何度汚せば気が済むんだ!!二度手間と言う言葉を知らんのか!この怒阿呆!!」
持っていたモップでガンっと三度程床を叩き、掃除しろといわんばかりに龍蓮へと、モップを投げつける。
ふぅと龍蓮は溜め息をついたかと思えば、一応モップを受け取った。
「これは、そなたの仕事だろう?」
とは言いつつも、渡されたモップで掃除をし始めていた。
「俺が掃除した場所をお前が汚したんだろう!!」
絳攸は龍蓮が落としていった花弁を掃除機で吸い、掃除を黙々とする龍蓮に笑みが零れた。

出会いは
此処に来た初日。つまり一週間前だった。
指定された部屋に向かっていたはずなのに、気付けば中庭の中心に居た。
…たぶん、中庭だったと思う。
そこで花に埋もれながらぽつりと一人佇んで居た人物を”藍楸瑛”と間違えたのが始りだった。
かもしだす雰囲気があの三つ子に似ていたからだ。
傍に行き「お前が藍楸瑛なのか」と聞こうと口を開け、閉じた。
そうだ、今は雇われの身。口を慎まねばとその場から去ろうとしたが、
腕を掴まれ、振り返れば寂しそうに見つめてくる視線とぶつかった。
しばらく何もいえず時間が経ったと思う。
どれくらい時間が経ったのかもわらないが口が自然に動いていた。
「お前、なんでそんな泣きそうな顔してるんだ」
その言葉に瞳を大きく瞬かせて見つめたかと思えば、笑顔になり、握られていた腕を
また掴みなおされる。
「私は藍龍蓮。そなたは?」




それからというもの。
毎日来ては汚して帰る。
2、3日前に注意すれば「すまん」と謝り、掃除をする。
謝るくらいなら汚すなよ、とも思うがそれは心の中にしまっておく。こういうのも悪くない。
モップがけが終わったのか、モップを投げるとそのまま絳攸の背中におぶさるようにしなだれかかる。
いきなりの重さにぐっと足に力を入れて何とか倒れるのを阻止するが、
重さに足が耐え切れないのか、膝がぷるぷると震えてるは止められない。
「重い…どけ!」
必死に立ってはいるものの、人には限界というものがあり、今の絳攸はまさに限界を超えている。
倒れる寸前に龍蓮はもたれ掛かるのを止め、絳攸の手を掴み
手の甲に口付けをおとす。
「そなたが私の世話係だったらよかったのに。」












遅くてすみません!
とりあえず2話目ですー