鏡を見て制服を調える。
それから3週間前の事を思い出してしまう。
―そなたが私の世話係だったらよかったのに。―
知らず口付けをおとされた手の甲に触れていた。
気付けば、顔も赤い…気がする。
チラッと目の前の鏡を見て、思わず驚いてしまう。
思った以上に…
「赤い…」
フルフルと顔を振り、
こんな事でどうする、と自分に渇を入れるため
頬を手で何度か叩く。
鏡をにらめ付ける様にしてやると、そのまま部屋から出て行った。
壁を見れば龍蓮御手製の目印。
赤いシールが貼ってある道を辿れば広間、青いシールを辿れば藍楸瑛の部屋。
本当に龍蓮の作った目印は分かりやすく
何十年も住んだ孤児院でさえ迷やすい俺を… いやいやいや、迷ってなんかない!
そもそもこんな広い屋敷なんだ誰だって迷う!!
そう、誰だって迷うから龍蓮はつけたんだ!
横目で壁を見、藍楸瑛の部屋へ行く道標の青いシールを確認すると歩き出した。
今日は入学式だ。
さすがに今日くらいは家に帰ってきて居るだろうと
扉をコンコンっと2、3度ノックを試みた。
しかし返答はなく、寝ているのか
はたまた帰って来ていないのか…。
なるべく音をたてずに扉を開け、部屋を覗きこんでみれば
ベットになにやら気配はある。
ひとつ咳払いをしてやる。
「楸瑛さま、もうじきに学校の時間にございます。準備を…」
言いかけて止まる。
ベッドの中に居る人物がもぞもぞと動き出して、布団がふわりと退かされた。
起き上がった人は、三つ子や龍蓮にそっくりで、でも何処か違う。
たぶん、いや間違いなく、あれが藍楸瑛。
しかし、その楸瑛は見る限り…
「なんで裸なんだ…」
思わずポロっと出てしまった言葉に楸瑛はくすりと笑うと、ベッドから出ようとしていた。
「まままままままままま、待て!待て待て!!」
絳攸は顔を真っ赤に染め上げて楸瑛が布団から出る事を止めやる。
その姿にまた楸瑛は笑みを零した。
「君、新しい子?可愛いね。」
くすくすと笑い続ける楸瑛に、もう誰も居るはずがない布団がもぞもぞと動き出した。
「楸瑛さま?どうかしたんですか…」
眠たそうに目を手の甲で擦りながら布団から女が出てきたのだ。
その女ももちろん裸。
なんとなく状況は分かった。
破廉恥な!!
心では罵倒し続けるがそんな事している場合ではないと言う事は
女がこちらに来ようとして何時事で気付いた。
女は獲物でも見つけたようににやりと笑う。
「あら、可愛い男の子」
本当にこちらに向かってこようとしてるのか、ベッドから白い足が出れば
ビクっと体が無意識にビクつき、一歩後退した。
女は何も纏わずベッドから下りると、やはり絳攸へ向かってゆっくりと歩を進める。
「ひっ」
絳攸は見てしまった女の身体に硬直し、声もなく無意識にふるふると頭を振り、
そのまま動かない身体を無理やり動かすために一歩下がり、目をぎゅっと閉じる。
すぅっと息を思いっきり吸い込み
「うわあああああああああああ」
ただ走り出した。無我夢中に。
書き直す可能性…大です!!