クリシミマス…?
暗い蝋燭の明かりのみの執務室。
手にもつ筆の感覚も危ういほどの寒さ。
息を吐けば其処は白くなりあっという間に消え去る。
そんな事に気付いたのはつい先程の事。
窓をみやれば外には白い粒、雪が舞い降りていた。
「さむいな…」
筆を置き、手を口元に寄せはぁっと息を吐く。
息がかかったときだけ暖かくはなるもののそれもあっという間だ。
すぐに寒さが手に戻ってくる。
これだけ。
これだけやってしまおうと、もう一度筆を手に取ろうとしたら部屋の影からコツと音かする。
「駄目だよ。それ以上は。」
フと視線を上げれば其処には見慣れた腐れ縁、藍楸瑛の姿。
「お前…。いつから…?」
いつから其処に居たんだと不思議に問いかけてみれば
楸瑛の手が頬に触れる。
それはいつもの暖かさの手では無くて
何時間も寒い場所にいたであろう、手。
「君の傍にずっと居た」
下ろしている髪に触れれば冷たくて。
ムッと顔を歪めてやれば瞼に落ちる口付け。
「知ってる?今日って特別な日なんだって」
上手く話題を変えた楸瑛に、もう一度「何時から其処にいたんだ」と聞いたところで
また上手く誤魔化されるのがわかるから
絳攸は諦めて呆れた溜め息を吐く。
「なんにもないだろう。」
カタンと椅子から立ち上がる。
そうすればクスっと傍で微かに笑声が聞こえた。
「いい子だね。帰るの?」
その言葉にイラっとして振り返り
バンっと音を上げて机を叩いた。
「お前が帰れと言ったんだろうが!!」
「いやいや、まさか本当に聞いてくれるとは思わなくて」
この話を続けたくは無くて先程話していた話に話題を変えるべく口をひらいた。
「で。今日は何の日なんだ!?」
苛立たしい気持ちは抑えることが出来ずに
怒鳴るように声に出てしまった。
「うん、今日はね…」
絳攸に向き合うと楸瑛は
絳攸の全てを抱きしめるように、覆いかぶさるように腰に手を回す。
「誰かの誕生日の前日らしいんだ」
急に甘えたような声を出して抱きしめてくる楸瑛に戸惑うが
話の続きも気になる。
諦めたように絳攸も腕を楸瑛の背へと回した。
「それで?」
「ただ、それだけ。
でも、子供に贈り物をくれる紅い服を着たひともいるんだって」
「…それが、何だ。」
楸瑛は絳攸の耳元に口付けをおとしながら、話を続ける。
「恋人たちはその日に一緒に過ごしたりもするらしいよ…?一夜とか。」
最後の方の声のあまりの低さに
ゾクっと嫌な予感がした絳攸は楸瑛の腕から逃れるべく身体をくねらせた。
「おま…え!!何を考えた!!今!!何を考えた!?」
顔を赤らめながらジタバタと手を大げさに動かす。
「え?何って。」
にこりっと嫌な音をたてて笑う姿はまるで悪魔。
いや、ただ単に厭らしいだけのケダモノだ。
「それは、ね。恋人だし?最近君の親御さんのおかけでご無沙汰だし?
私は精神的には子供で、贈り物が欲しいし?ね?」
「何処が精神的に子供だ!!?思いっきり盛ってるじゃないか!!」
もぅ逃がしてもらえる事は不可能なのか。
ガッチリと腰を掴まれていた。
「精神的と精力は別物だよ。こーゆー?」
ブンブンっと顔を赤から一気に真っ青に染め上げた絳攸は
首が千切れるのではないかと言うほどに振り続けた。
「君の家には、今日は帰りませんって連絡は入れておいたからね」
その言葉に嫌でも黎深の般若のような顔が浮かぶ絳攸は
本気で自分の明日は無いと確信を得る。
楸瑛についていけば楸瑛に。家に帰れば黎深に。何を言われるか、楸瑛ならば何をされるかわからない。
ガックリと頭をおとして力なく楸瑛へと体を預け、蚊の鳴くような声で
「もぅ…好きにしろ……」
と、うなだれるのであった。
「絳攸、愛してるよ?」
ぎゅっと抱きしめられる腕の力が強くなったのを感じた。
クリスマスっぽいの
中途半端ですね、中途半端って言葉大好きです!!
一応裏に繋げるつもりです…
まだリンク貼ってないんですけどね。
つなげても更新には書かないです。スミマセン。
メリークリスマスでした!!