学園物パロ(注意:絳攸女体化)
藍絳攸は学校の帰りで夕方だと言うのに未だ家に帰らずに、公園で寂しさを紛らわしていた。
ベンチでただ何もせず呆然と色んな子供達や、子供と遊ぶ親を見続けると頭をたれ、地面に足で円を描くようにぐるぐると回し、最後に踵でグリグリと地面をえぐった。
風が吹くたびに舞うスカートに視線を移し、また地面を見やる。
時々寂しくなる時がある。
寂しさはどうしたら紛れるのだろうか。
「…俺は。」
養い親の事を思い出し、胸の奥にモヤモヤしたモノが募って行く。
本当に自分は愛されているのだろうか、恐くて恐くて顔が歪むのが解かる。
泣く、と思い地面を見つめる。
ぽた。ぽた。
地面に雨が降ったかの様な二つの水が滲みた後。
――――――弱い自分が嫌いだ。
また視界が霞む。
また涙が落ちる。と、思った瞬間。
ピーひょろろロぴーピーひょロろろロ。
耳の鼓膜が破れるのではないだろうかと思うほどの奇怪な音が流れた。
あまりの音に次に溢れそうだった涙がすっと引っ込むのが解かり、少しだけ安堵する。。
「一体何だ」と回りを見回すと、気付けば空はもう闇に染められ電灯がぱかぱかと点きはじめていた。
こんなに時間が経つのは早かっただろうか。
もう子供や親子の姿が見受けられない。
その中に電灯の明かりに照らされ、一人ポツリと佇む子供。
その子が今の自分と重なり、何か言わなければ。
何か、話しかけないといけない。そんな思いにかられベンチから腰を上げると、
わざと今此処に自分が存在する事を示すかのようにザッザっと砂をずるように歩き、少年の傍へと近付いていく。
「お前、何をしている。子供はもう帰る時間だろ」
少年は笛に唇をあてがったまま、くるりと絳攸へ振り向くと笛を下ろした。
「貴殿も、子供だ。」
最もな言葉だった。
ムッと多少顔が怒りに歪んだが、相手は子供。大人にならねば、と心を落ち着かせた。
「お…俺の方が上だ。親が心配するだろう?」
ほら、帰れと言わんばかりにシッシと手で追い払うようにしてやる。
「笛を奏でていた。」
子供は人の話を聞いちゃいなかった。
ピクっと青筋を浮かべかけたが、ここは鉄壁の理性だ、と抑える。
「笛は寂しさを紛らわせてくれるからな。」
トクンと鼓動が鳴った気がする。
「お前、寂しいのか…?」
否定も、肯定もしないで、ただ無表情に無言を突き通す少年に苦笑をうかべる。
頭を撫でてやるとゆっくりと顔を上げて嬉しそうに笑うその顔に、何だか自分も嬉しくなる。
「私は藍龍蓮。貴殿は?」
「俺か?俺は、李絳攸だ。」
そうか。と頷くと、また笛を口にあてがう。
ゲッと絳攸は嫌そうな顔をしたが、似た者同志。仕方ないかと龍蓮の笛を聴いてやる事にする。
ピーひょロぴーぴーヒョろろロろろロ
奇怪な音が木霊する。
近所迷惑も甚だしい、と思いながらも何故か嫌ではないその音色に耳を傾ける。
奇怪な音の中にある寂しさ、胸をえぐられるような痛みに何度も溢れる涙を抑え、ただ、ただ聴く事だけに専念する。
演奏が終わるとお互いに何も言わず、時が流れるのを待つ。
ふと絳攸はランドセルに入っている縦笛に気付いた。
「お前、リコーダーの練習はいいのか?」
瞳をまん丸にさせ絳攸を一度見ると、龍蓮は手の中にある横笛に視線を移した。
「横笛の方が風流であろう?」
何だかよくわからない答えに「そうか?」と聞くのも不躾な気がして「そうか」と頷いてやる。
そんな絳攸を見た龍蓮は、横笛をランドセルにしまうと縦笛を出した。
「そなたと出会えた記念だ。」
奏でる音色はとても綺麗で色んな寂しさも消してくれるようだった。
「じゃあさっさと帰れよ」
「貴殿も。」
お互い笑うと、互いが帰るべく為に歩き始めるが、思い出したように絳攸が龍蓮へ振り返る。
「…俺は、リコーダーの綺麗な音よりお前のその横笛が奏でる奇怪な音色の方が好きだ。」
ポツっと呟いた声は龍蓮に聞こえたようで、とぼとぼと絳攸へ向かって歩いてくる。
「絳攸」
初めて龍蓮に名前を呼ばれ、ドキリした
刹那、唇が奪われていた。
「絳攸それは“反則”と言うやつだ。」
また帰るべく道に振り返ると、とぼとぼと歩いて行く。
龍蓮の姿が見えなくなる頃にやっと我に帰った絳攸は、
小学生に唇を奪われたとか、そんな事よりも「また会おう」と言えなかったことがとても悔しかった。
龍蓮が歩いていった道をを見ながら心の中で呟く。
――――――――また、会おう。