そう。もうすぐバレンタインだ。

−絳攸、今年は君の手作りチョコが食べたいな−
そう言われたのは1月の中旬。
何をいっているのか、さっぱり分からない俺は
頭にとうとう虫でも湧いたのかと2、3歩楸瑛から距離を置く。
少しだけ頬をわざと子供のように膨らまし、カレンダーを一枚捲り2月の14日を指で指す。
ああ。と納得したように、ポンっと手を叩くと、もう一度同じ言葉を楸瑛は繰り返した。
−君の手作りが食べたいな−

まぁ、そんなこんなで楸瑛の為にチョコを作ろうとしたのだが
初めはガトーショコラを作ろうとこころみるも
何度も失敗。
仕方ないので溶かして、型にいれればいいという
すごく簡単なものを選んでみてものの
自慢にもならない俺の腕ではチョコを焦がすことしか出来ない。
鍋で直火にかけ、使用人に怒られたのも両の指でも数えられないくらいだ。

最近の楸瑛といえば、そわそわしたように、ウキウキとこっちを見てくる。
まわりに花を飛ばせ、俺に微笑みかけてくる。
期待してるのはわかる、わかるんだ。
しかし、出来んモノは出来んのだ!!
「くっそー。チョコが足りん!!」
イライラをぶつけるようにエプロンを解くと机に投げつけた。

キッチンから出てきた絳攸に後ろから忍び名を呼ぶ。
「絳攸」
ガバっと絳攸を抱き抱くと
鼻を掠める甘い香り。
そのまま鼻を絳攸の髪にうずめれば、そこからチョコの香りがした。
絳攸の体に染み付いたのだろうか。
ずっと君が一生懸命チョコを作っているのはしっている。
君が料理苦手な事だって全部、君の事なら全てわかるつもりだ。
君にチョコを作って欲しい何て言ったのは
私の事だけ考えて、私の事を想いながら作ってくれるのが嬉しいから。
それから君を困らせて少し楽しんでいるのかもしれない。なんて、そんな事を言ったら怒られるかもしれないね。
くすっと笑えば腕の中から呆れている声が聞こえる。
「おい、楸瑛はなせ。俺は忙しいんだ!」
私の腕をどけて、私の腕から逃れると外に出ようとしてるのか
鞄を持ち上着を羽織っている。
「どこに行くんだい?」
「お前には関係ない。」
即答されるのはわかっていたので次の言葉を紡いだ。
「行き先を教えてもらわないと、車が出せないよ?」
あっと顔を引きつらせる
「君付きの運転手兼お世話係だからね。私?」
「あ、ああ歩いて行けるところだから一人でいく!」
「だーめ。君が一人で行ったらいつ帰ってこれるか分からないだろう?」
すっと絳攸の手を持ち玄関へと導いた。
「さぁ?何処に行きましょうかお姫様?」



車に乗り込んで、何処に行きたいのかと問えば
耳を澄まさないと聞こえないような声で。
−……チョコが売ってる所。−
車に乗って数分が過ぎたと言うのに、まだ恥ずかしいのか
頬を染めて下を向いてる彼女のなんと可愛い事か。
思わずニヤけてくる。
自分のためにこんなにも頑張って、苦手な料理をしているのだ。
「もぅ!!絳攸可愛い!!」
思わず心の声が外にもれてしまう。しかも大音量で。
絳攸はいきなりの告白と大きな声にビックリして顔をもち上げる。
「ば!ばか!!言わんでもいい!」


そのままチョコを購入後
またキッチンへと直行。
エプロンをまた着て、買ったチョコ達を出す。
楸瑛、お前のために頑張るから…










バレンタインの為にかいたのに
あげるの忘れてました;;
なんという失態!!すみませーん!